能の原点は五穀豊穣の祈りと自然への感謝

久田陽春子さん

大倉流小鼓方として舞台に上がる久田陽春子さん。父は同じく大倉流小鼓方の久田舜一郎さん、夫は観世流シテ方の寺澤幸祐さん、二人の子どもたちも子役時代から舞台に上がる芸能一家です。伝統芸能の家に育ち、主婦として、母として、毎日の食についても大切に考えています。

【おいしく食べるのはこんな顔】
陽春子さんの毎日は、朝のお弁当作りから始まります。「子どもたちのお弁当作りはもう習慣になっています」という陽春子さんが、最近気に入っているのは保温機能があるスープジャー。「今日はどんなスープを作ろうかと考えるのが楽しみです」と言いながら、野菜をたっぷり使って、すまし汁、味噌汁、中華風、イタリア風と、さまざまな種類にチャレンジ。保温調理ができるため、簡単に調理をするだけで時間とともに味がしみて具材がやわらかく美味しくなるという利点があります。アツアツを食べられると、中学生の二人のお子さんにも好評です。
小鼓の演奏者の日常は、忙しく過ぎていきます。一つの舞台を演じるまでに、自身の稽古、関係者との打ち合わせや稽古があり、加えてお弟子さんへの指導、最近では文化庁の学校公演で小中学校を回る機会も多いのです。お昼ご飯は楽屋弁当が多くなる分、「家では野菜が中心」という食生活。もともと肉より魚、というのは夫の寺澤さんも同じ。「市販のお惣菜は味が濃くて苦手。そんなに凝ったものは作りません」と言いながら、朝、お弁当を作る時に晩御飯の準備も段取りよく進めます。
ありがたいのはお弟子さんやファンから、手作りの野菜が届くこと。兵庫県の近郊から届くことも多く、「新鮮な野菜は形が悪くてもとても美味しいです」と、くまなく料理に使っています。

【かつて能は今より身近なものだった】
夫婦共にお酒が大好き、飲みたいお酒に合わせて料理を選ぶのが常です。先日、久しぶりに神戸ワインを飲んだ時、以前より味に深みが出ていたと感じたそうです。作る人の努力は一朝一夕になるものではありません。邦楽の世界も同じで、毎日の努力によって少しずつ芸の幅が広がります。能は元来、神様に捧げるもの。自然に感謝し、豊作を願う農業と深いつながりがあります。
湊川神社の能楽堂も2年前にひらかれました。神戸には能の舞台になっている地がいくつもあります。「地元神戸の人に、もっともっと能を身近に感じてもらえるようにしたい」という言葉に、静かな意気込みを感じました。

子どもたちのお弁当に愛用しているスープジャーに、毎日野菜をたっぷり入れています。

お弟子さんやファンの方から届くとれたての野菜。新鮮な味に家族も大喜びです。

高台から見る神戸の景色が大好き。六甲山の麓のレストランで夜景を見ながら食事をすることも。

2014年、父久田舜一郎さん(中央)の古希記念公演のため、長男の拓海さんに稽古をつける夫の幸祐さん。

長男、拓海さん(中3)。初舞台は2歳。舞台で初めて能面をつける「初面」を経験した。

長女、杏海さん(中1)。稽古を楽しみ、舞台でも初々しい演技を見せてくれます。

松月会 久田
TEL. 0798-73-6586